銀多伝②〜知られざる必勝法?〜
前回の記事の続きです。少し手順が長くなるので、盤に並べてみるとよりわかりやすいかもしれません。
shogi81komaochi.hatenablog.com
前回の最後、▲9八香と上がった局面です。
△2四歩 ▲3七桂△2三銀 (第1図)
上手は壁銀を解消してきました。
下手は▲3七桂と跳ねて、銀多伝の囲いが完成しました。
第1図以下の指し手
▲5五歩 △同 歩 ▲同 飛(第2図)
そして下手は5筋の歩を交換します。歩を持ち駒にするのは結構大きい手です。
第2図以下の指し手①
△5四歩(第3図)
まずは△5四歩と上手が平凡に受ける手を見ていきます。
第3図以下の指し手
▲5六飛(第4図)
代えて▲5九飛(変化A図)も普通です。むしろ全然普通。
元の58の地点に戻るより、1番下に引く方が①飛車の横効きが通っている②当たりを避けている、という点で数段優れています。
ですが、この場合▲5六飛と中段に引く手も面白いのです。
第4図以下の指し手
△7五金▲7七桂(第5図)
▲5六飛は金取りなので、上手は△7五金と逃げるしかありません(△7五歩は▲7七歩があります)。
そこで▲7七桂!が継続の一手。これがあるから▲5六飛と引いたのです。
上手の金を逃げれないようにして、次に▲7六歩と金を殺す手を狙っています。
第5図以下の指し手
△6五桂▲6六歩△7七桂成▲同 金(第6図)
上手は△6五桂と跳ねる手をひねり出しました。
そこで普通に▲同桂△同金と取ると、上手の金が助かってしまいます。
▲6六歩が好手。77の地点で桂馬を交換した第6図を見てください。先ほどと同様に上手の金が息苦しいですね。
次に▲7六歩(または▲6七桂)で金を取る手を狙っています。
第6図以下の指し手
△6五歩▲6七桂△6六金▲同 金△同 歩▲同 飛△6四歩▲6五歩(第7図)
上手は△6五歩と突きましたが▲6七桂がさらなる好手。
え、△6六金▲同 金△同 歩でただの金交換じゃないかって?
下手はさらなる継続の一手を用意していました。それが▲6五歩!です。
第7図以下の指し手
△7三桂▲6四歩△同 銀▲5五桂△同 歩▲同 銀 (第8図)
▲6五歩に△同歩と取ると▲同飛(王手)で、△6四歩と受けたら▲8五飛とこちらに行くことができます。飛車の成り込みが受からないのです。
かといってほっとく訳にもいきません。
△7三桂は▲6四歩△同 銀の局面で▲6五歩を受けた(△同銀と取れる)一手ですが、そこで▲5五桂が必殺の一手!
数手前に金取りに打った桂馬がここで活躍しました。
第8図となっては下手の攻めが炸裂しています。
第8図以下の指し手
△6五歩▲5六飛 △5五銀▲同 角△5四歩▲6四金(第9図)
第9図で△5二玉と逃げますが▲5四金と歩を取り返して下手大優勢です。
自然に上手玉を下段に落とす攻めになっていて、飛車も角もよく働いています。
△6五歩のところ、△6五金と受けても▲5四金△5二玉▲6四銀と銀を取って、△6六金と飛車を取られても▲同角(参考B図)と取り返して下手大優勢です。
下手は金銀をたくさん持っていて、上から押しつぶしていけば勝てそうです。
結構長い手順となってしまいましたが、
下手は▲5六飛(第4図)の局面からひたすら上手の金を取ろうとし、上手は駒損しないように頑張って金を逃げていましたが、気付いたら下手の攻めが決まっていました。
どうやら▲5六飛の局面では上手は困っているようです。
裏技のような手ですが、一本道で上手が変化するのは難しいのです。
というわけで次回はその直前の第2図に戻って
△5四歩に代えて△7五金(第10図)と金を引く手を見ていきます。
しかしこれでも下手は用意の順があるのです。
お前はもう死んでいる……。